Pu94-7:犬舎ライラプス

駆けよ、例えその身が虧けても。


S式階級制度が敷かれた世界では、階級による立場が絶対である。

その階級制度における最下層であるD拘囚階級よりも下の地位にあるのが、D型アンディグラフと呼ばれる、戦闘や過酷な環境での作業を行わせるために生み出された複製人種である。

とある定点では、廃棄前のD型アンディグラフによる、文字通り命懸けの、違法デスゲームが行われていた。

期限を迎え廃棄の決まったアンディグラフは、用途目的、経歴、成績、損傷具合に関わらず速やかに廃棄されなければならないと、モノリスボーダーによる倫理規定で定められている。

しかし、モノリスボーダーの監視の目を盗み、裏でアンディグラフを娯楽の道具として扱っている組織があった。『犬舎ライラプス』シュミラクラムの製造と輸出業を担う工場型のコロニーの一角で、その違法ゲームは行われている。

ゲームの勝利者は、転生のためのシード権が与えられる。

つまり、廃棄を免れ、社会で生きていくことが許されるチャンスを手にするのだ。

ルールは簡単。

これは点取りゲームである。

相手を殺せば2点。

相手の名を知れば50点。

8日間以内に、100の点数を集めること。

参加者はAからZの26文字を冠したコードネームで扱われる。

各文字2名ずつ52名が選出され、同じ文字が当てがわれた者同士でペアを組む。点数はペア間で共有される。

破壊され殺される、あるいは行動不能の損傷を受けた場合、その場で退場となる。

損傷が酷くない場合は次回の開催に参加も可能だが、そもそも廃棄前のD型アンディグラフが修理をしてもらえるはずもない。この手段で戻ってきたものは多くはいない。

名前を知られれば、その後永久にゲームへの出場資格を失い、ゲーム終了後の廃棄が確約されてしまう。最大で8日間だけの命が定められてしまうのだ。

なにより転生を懸けてこのゲームに参加している以上、誰も己の真の名前をバラすことは決してない。

慈悲により、破壊される以外では退場扱いされないが、例えば失格者の得たポイントは消滅する。

8日目の終了までに点が規定量集まらず、且ついかなる理由においても失格にもならなかった場合は、次回の参加に持ち越すことができる。

もちろん、場合によっては相棒を殺しても構わない。

自分と相棒以外の50人、すべてを殺すか。

あるいは、どんな手段を用いても誰かの名前を2つ聞き出すか。

それとも勝てるチャンスが巡ってくるまで何度もやり直すか。

主人公の通称『A-アクセル』は、潜入捜査員としてこの違法ゲームに参加するモノリスボード製偽装アンディグラフの一人。

うまく目立たぬように立ち回り生存しつつ、このゲームの全容を明かし、摘発するのが使命だった。

彼はこのゲームにおいて、『テクメソス』と呼ばれるある人物の正体を探し求めている。

しかし、今回のゲームにおいて彼の相棒となったA-アンネリースは、ゲーム開始直後にアクセルに己の名を教えてしまう。

ルール上アンネリースはその場で失格となってしまう。

目立たぬように立ち回るはずが、一瞬にして高ポイント所持者となり、参加者総員の標的の的となってしまったアクセル。

驚くべき速さで他の参加者を破壊していくX-クシローゼとX-ジスターの存在や、アンネリース=アンテノーラの思惑、そして、アクセルとモノリスボーダーが追うテクメソスの謎とは。


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