Te52-80:定点レネストラ
約束を求め空を泳ぐ鯨の終点。
遠謀の大地と神慮の海に、埋もれる骨のまどろむところ。
定点レネストラ。
広大なその星では、52の日で月が回り、18の月で年が巡る。
機械(アーク)帝都が治める中央大陸の北端に、ある日、未登録の飛空艇——空鯨船が墜落した。
悠久山脈の山頂へ向かって、数十キロの軌跡を描いて大きく抉る様に突っ込んだその船の噂は、大陸を超え瞬く間に広がった。
貴族がお忍びで使っていた高級船、長年高空を漂っていた幽霊船、古代文明を乗せた浪漫船、はたまた、ほかの星からやってきた宇宙船?
「いいや、どれにしろ、きっとその船にはお宝がザクザク積まれているに違いない!」
空鯨賊団≪ヘッドウィンド≫の船長イズヴァは、スピードの出しすぎだと叫ぶ船頭ソルツィガレンの忠告もうわのそらで舵を切り、いちはやくその空鯨船の墜落地点——悠久山脈の頂上へと向かうため、相棒の空鯨船を猛スピードで走らせていた。
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